【『未来回路2.0』のコンテンツの一部を公開!】対談「欲動としてのコミュニティ〜分断と接合のコミュニケーション〜」 山本ペロ×中川康雄

1、はじめに

中川康雄(以下、中川) 現在、グローバル資本主義の発達に伴って、昔ながらの地域共同体の維持というのは難しいものになっていると思われます。労働力の流動性が求められ、人間を旧来のコミュニティが引き剥がすということがされてきた。そして都心において顕著なように、フラットな時間・空間の中で市場におけるプレイヤーとして生きることが要求される。
 けれども、そんな個人と市場が向き合って競争を勝ち抜く、なんていう「物語」にすべての人が適応できるものではありません。その「物語」にのれない場合、自分が働くことを価値さえみえなくなる。そして、当然、生きる気力さえも失いかねないのではないでしょうか。
 近年、急激に広がってきた旧来のコミュニティの解体とそれに伴って立ち現われてきたフラット世界。けれども、ここ最近、注意深く人々の動向を見ていると、そのフラットさに反応する形でコミュニティカルチャーというものが目立ってきた感覚があるのです。
 今回の対談は、そういった流れの中でセッティングされています。
 まず、山本さんにコミュニティに興味を持ちだしたきっかけだとか、今までこういうコミュニティを経験してきただとか紹介していただければと思います。

山本ペロ(以下、山本) 私は小さい頃に自分の両親があまり仲が良くなくて、その代わりに地域の習い事のコミュニティにいることによって、心が助けられたということがありました。習い事をはじめたのは3歳くらいだったんですけれど、本当にいらっしゃる人の層が幅広くて、年長の人たちにすごく可愛がってもらっていました。

中川 それは内容としてはどういう習い事だったんですか?

山本 いわゆる英会話教室みたいなやつで、英語劇みたいなものをやっていました。その時に色々、可愛がってもらった思い出がずっと心に残っています。他人同士でも楽しくやれるんだなと、すごくシミジミと。肉親だけじゃ埋められない何かを他人が集まることによって埋めることができる、そんな感じがしました。

中川 例えば、アダルトチルドレンという言葉が流行った頃に「機能不全家族」という問題が一時期クローズアップされた時期があると思うんですけれども、それって家族以外に逃げ場がない状況で子供が育ったから家族に縛られているというところがあって、実は外にもアクセスする回路みたいなものを持っていたら、結構こじれずに育つことも可能なのかなと。今、お話を聞いていたら思いました。

山本 そうですね。今、虐待とか多いときに他にはけ口が無いっていうのが一番虐待の辛いところだと思いますね。私自身も夫と結婚した時に、自分が虐待してるかもしれない、と思ったことがあるんです。このままいったらDVの道だなっていう時があって。自分の言葉にできない激しい感情っていうのがどうしても出てきてしまって手がバッと出ちゃうという。それが自分の中での問題だった時期があって。そういうのを他の場所で出せると楽なのになと。私は結構引きこもりがちだったりしたんで、余計。

中川 習い事をするっていうのは、ある程度の年齢になってくると能動的に動いていかないとなかなか関わらないですよね。大人になったあと、あるコミュニティにアクセスするってことを考えるってことが都市で重要な気がします。社会や地域にどのようなインフラを作っていくことで、機能不全に対処できるのかってところを考えてしまいます。何が原因で内にこもってしまうのかということも含めて。例えば、それぞれのコミュニティは豊かさを今現在でも持っていると思うんですよ。そこから外れてしまっている状況からそこからでもフラストレーションを昇華するような回路にどういう風に繋げることができるのかなぁと思います。

山本 社会の状況からして切断が前提になっているような状況になっている中で、切断されているってことにみんな自覚的になっているように感じますね。切断されている状況が長く続いていてそれを何とか打破しようという段階にいるなぁと。それは私自身の問題でもあります。外国では土日にホームパーティを開くとか結構普通にあったりして、そういう中でコミュニティができていくというのがあるんじゃないかなぁと。そして、ホームパーティを仕切ったりしていく経験が増えていくと、例えばNPO活動とかもすごくやりやすいらしいんです。ただ日本人はそういう習慣がなかったりしていざ作ろうとしても、どうやっていいのかわからない、とか聞いたことがあります。

中川 最近、アート系のパーティとかちょこちょこと足を運んでるんでるんですよね。フールドワークも含めて繋がりも作っていこうと思って。けれど、僕はイベントとかパーティとかやっていると、まずその意味とかを考えてしまうんですよ。それがパーティ文化になじむ隔たりというか障害になっている気がします。パーティはパーティでそれでいいはずなのだけれども。


・・・続く。


【プロフィール】
山本ペロ(やまもと・ぺろ)
ライター。環境問題媒体を中心としたライティングを行う。2006年より極力環境に負荷をかけない生活を目指す「エコビレッジ」の普及啓蒙団体で活動。国内で実際に生活しているところなどを訪問したり、海外のエコビレッジ設立者養成プログラムの翻訳プロジェクトなどに関わる。やがて都市でのエコビレッジをどう形成するかというところに惹かれ、コミュニティづくりの一端としてイベント制作やフリースペース運営にも携わる。現在は、初台のマンションをエコビレッジ化するプロジェクトに少しだけ関わっている。